一度寝て冷静になったのか、私は淡々と現状を受け入れる。
縄で縛られた手足を眺めながら、『貴方と運命の恋を』の知識を引き出した。

 本来のシナリオでは、荷馬車へ乗せられそうなところに攻略対象者達が駆け、助けられるという展開だった。
でも、シナリオ通りの行動を取らなかったせいか……それとも、黒幕になる筈だったリディアがお人好しのせいか、全然違う展開になってしまった。
まあ、今回の件に関してはゲームのリディアもほとんど関わってなかったけど。
せいぜい、首謀者の女子生徒の背中を押したくらい……だから、『概ねシナリオ通りになるのでは?』と思ったのに。

 最悪の展開と呼ぶべき状況を前に、私は『はぁ……』と深い溜め息を零す。
ヒロインのスペック的に、まず自力で脱出は無理。
攻撃力0の完全サポート型だから。
『せめて、護身術だけでも覚えておけば良かった』と後悔しつつ、私は扉をじっと見つめる。