不味い……!捕まる……!

 わざわざ振り向かずとも分かる奴との距離感に、私は不安と恐怖を覚える。
目に浮かんだ涙を袖口で拭い、私は必死に手足を動かした。

「もうこの際、誰でもいいから……!お願い、助けて!」

 半ばヤケクソになりながら、そう言った瞬間────リエートの偽物に捕まる。
と同時に、布を顔に押し当てられ……一瞬で、気が遠くなった。
恐らく、麻酔薬を染み込ませてあったのだろう。
『ヤバい……意識が……』と思った時には、もう手遅れで……深い眠りへと落ちる。
そして、目を覚ましたら────倉庫のような……納屋のような空間に居た。
ガタガタと揺れながら動いているため、多分あの荷馬車に乗せられたんだと思う。

 ……結局、助けは来なかったか。