どこか吹っ切れた様子で兄と向き合う彼は、すっかりいつもの調子である。
少なくとも、先程まであった迷いや躊躇いは確かに消えていた。

「同じ属性を持つ魔力なら、譲渡可能だろ?もし、懸念材料が魔力切れだけならこれで解決すると思ったんだけど」

 『最悪、討伐隊に合流出来なくても戦い続けられる』と話し、リエート卿は腰に手を当てる。

「この作戦にはもちろん────俺も参加する。一応、俺もリディアから魔力譲渡を受けられる立場だからな。何より、リディアを護衛しながら魔物の駆除に明け暮れるのは大変だろ?ニクスが攻撃に集中出来るよう、協力するぜ」

「なっ……リエート!」

 『話が違う!』と言わんばかりに声を荒らげるアレン小公爵に対し、リエート卿は笑った。
全てを照らす太陽のように明るく、元気に。

「安心して、兄上。俺、絶対に死なないから。つーか、これで死んだらもう全員お陀仏間違いなしだし」

 半ばおどけるように言い、リエート卿は肩を竦める。
でも、サンストーンの瞳に宿る光は真剣そのものだった。