言外に『諦めろ』と促す彼に、私は尚も食らいつく。

「確かにコントロールは出来ないかもしれませんが、相手は魔物の大群(・・)なんですよね?なら、威力を気にせず派手に攻撃を仕掛ければ……」

「却下だ。討伐隊がどこに居るのかも分からない状況で、大技を何度も仕掛けるなんて馬鹿にも程がある。もし、仲間に当たったらどうするんだ」

 『それこそ、大惨事だぞ』と現実を突きつけ、兄はアレン小公爵の手を振り払う。
そろそろ本気で行動を開始しようとする彼を前に、私は焦りを覚えた。

 早く何か言わないと……このままじゃ、本当に一人で行ってしまう。

 『説得材料を探さなくては』と躍起になり、私は視線をさまよわせる。
その時、ふと────サンストーンの瞳と目が合った。
どこか凛々しい光を宿すソレに瞠目すると、不意に頭を撫でられる。
『まるで、俺に任せろ』とでも言うように。

「とにかく、リディアはここで大人しく……」

「────なあ、リディアから魔力を分けてもらってニクスが攻撃するのはどうだ?」

 兄の行く手を阻むように立ち塞がり、意見を述べたのは────他の誰でもない、リエート卿だった。