それも、そうだわ。夜会は全然来ていなくて久しぶりにあんな踵の高い靴を履いたし、しかもそつなく踊りの上手い夫相手だと踊るのも楽しくて、調子に乗って三曲も踊ってしまった……靴擦れは、起こるべくして起こっていた。

「……レニエラ。どうしましたか?」

 様子がおかしいと思ったのか、ジョサイアが顔を近づけて聞いて来た。

「あ。ごめんなさい。ジョサイア。私、靴擦れしてしまったみたい……っ」

 言うが早いが、彼は私の身体を横抱きにして、颯爽と彼は会場を抜けた。驚いた私が、恥ずかしいと思う隙もなかったくらいだ。

「もう帰りましょう。アルベルトに会うという、本来の目的は果たしましたし」

「えっ……ジョサイア。私は良いけど、貴方は大丈夫なの……?」

 私は既に社交界では婚約破棄された腫れ物扱いされていて、親しくしている人も居ない。けれど、彼のような人は人脈も大事だろうし、挨拶をしなければいけない人がたくさん居るのではないだろうか?

「大丈夫ですよ。妻の怪我以上に大事な人も居ません」

 至近距離で整った顔に微笑まれ、私は思わず顔を伏せた。美形侯爵の笑顔、心臓に悪い。