「……ああ。夜会の場で仕事の話など、無粋なことをした。どうだ。夫人。二日ほど温泉のある離宮を貸そう。夫婦で行ってみては? まだまだジョサイアの多忙は続くだろうから、本格的な新婚旅行には当分行けないだろう。こうして揃ったところを見たところ、どうやら二人の間には色気が足りないようだ。気分を変えてゆっくりして来たらどうだ?」

 確かに私たち二人は、結婚はしているけど、離婚前提の契約結婚なので、ベッドを共にしていない。真面目なジョサイアは、それを仲の良いアルベルト陛下にも言っていないようだ。

 ……けど、こうして軽く会っただけでわかってしまうくらいに、私たちは健全な関係に見えるのかしら。

「ありがとうございます。陛下」

 とは言え、王からの有り難い申し出には、なんであろうが微笑んで甘受しお礼を言うしかない。

「とても、今休みを取れるような状態ではないと……思うんだが?」

 ジョサイアはため息をそのままにしたような悲壮な声音でそう言えば、アルベルト陛下はやけになったかのような明るい声を出した。