「冗談はその場に居る全員が笑えなければ、冗談とは言えない」

 憮然として気に入らない態度を崩さないジョサイアの真面目なところが良いと答えた私の言葉に、アルベルト陛下は大きな声で笑い顎に手を当てた。

「どうにも、最近忙しくてな……二人は新婚だというのに、夫人には迷惑を掛けている。隣国との関税問題が、上手く纏まらない。国民に課す税とは別で、輸入輸出に関する関税は慎重を期すべき問題だ。各領地の思惑も絡み、正式な書類を出せと言われれば、長い時間を使って会議をするしかない……ゆえに、そこの有能な宰相補佐ジョサイアは、家にはなかなか帰れない。許せ」

「まあ……そうだったんですね。皆様、大変ですね」

 ジョサイアは、私には詳しい仕事の話はしない。だから、こうして彼が仕える陛下本人が話してくれるまで、彼が何故忙しいのかを知らなかった。

 今、揉めているのが関税の話ならば、お互いの国ばかりか街道のある各領地の領主たちの税収にも関わってしまうので、宰相補佐の彼が帰れなくて当然だった。