アルベルト様には既に正妃様が居るので、私は今ここに姿のない彼女に睨まれないようにと、心の中で強く祈るしかない。社交界は王族中心なのは当たり前だから、正妃様に睨まれたくなんてないもの。

 懸命に作ったなんでもない笑顔が引き攣ってしまうのも、仕方ないわ。

 嫌だわ。我らが王アルベルト陛下は、ジョサイアとは似ても似つかない性格で、口が上手くてかなり軽い性格の人みたい。

 正反対の性格だから……この二人は、仲が良いのかしら?

「……アルベルト」

 いかにも機嫌の悪そうな声を出したジョサイアに、アルベルト陛下は続けた。

「ジョサイア。熱い新婚夫婦に対する、良くある冗談だ。射殺すような目で私を見るな……不敬だぞ」

「自分がさっき、何を発言したか内容を思い出せ」

 自分の妻を愛妾にどうかと揶揄われたジョサイアは、それを軽く流してしまうつもりはないようだった。固い表情のまま、本当に面白くなさそう。

「だから、私は冗談だと言っている。こんなにも真面目一辺倒の男だと、つまらなくないか? 夫人」

「いいえ。夫は、そこが良いのですわ。陛下」