「ジョサイア! 船室を見た? 本当に、素晴らしかったわ」

 以前の旅で気に入った船旅が好きだと言っていたレニエラは、真新しい船におおはしゃぎな様子だった。

 この帆船はとある船団で注文を受け作られたものだったそうなのだが、発注した側の経営が傾き、船を探している僕に購入してもらえないかと、話がまわってきたものだった。

 貴族に近い層向けの作りも多く、実際に下見して吟味してから購入を決めた。

「ああ……ちゃんと先に見ているよ。この船を購入したのは、僕だからね」

「ジョサイアって、この船の話を聞いただけで、購入を決めた訳ではないの……?」

 レニエラは僕の金遣いについて、色々と思うところがあるようだ。誤解されていると感じるところも多いのだが、言われてしまっても仕方ない部分があるということは認める。

 今までが多忙すぎて金を使い暇がなかったし、元婚約者オフィーリアの贅沢をさせた件については、彼女の抗議について何の言い訳も出来ないので何も言えない。

「流石に……ここまで高値の物は、ちゃんと吟味するよ。レニエラ」

 苦笑した僕に、彼女は疑わしい目を向けた。