私は宿屋の前まで見送りに来てくれたオフィーリア様と、名残を惜しんでいた。

「……レニエラっ」

 名前を呼ぶ声が聞こえて私は信じられない思いで、後ろを振り返った。

「ジョサイア!? 何故ここに居るの?」

「こちらの台詞です……オフィーリア。久しぶりですね」

 そこには走って来たのか、荒い息をついていたジョサイアが居た。

 私は驚きと共に、彼は仕事に行ったはずだと思った。しかも、ジョサイア待ちの書類があるからって、呼び出しまでされていたのよ?

 オフィーリア様を見て怒っている様子のジョサイアを見て、私はどうしようとは思った。

 これまでの情報によると、彼がオフィーリア様に感謝こそすれ、怒っているはずなんてないはずだけど……。

「あら、ご多忙のはずの宰相補佐さんじゃない……貴方って、怒ること出来たのね。ジョサイア。いいえ。貴方の感情が動くのは、彼女のことだけ……かしら?」

「そろそろ、恋人に対し隣国へ、圧力を掛けるのは止めてくれと言って貰えませんか。両国の重臣はすべてこの関税問題に掛かりきりで、しかも終わりが見えない。僕への仕返しなら、十分なはずです」

 ……え?