「私はもう、結婚するつもりがなかったんです。だから、ジョサイアにも一年後に別れようと言っていました……けど……」

 そうだ……そういう……今まで考えていた、すべての前提が崩れてしまった今、私はどんな顔をして彼と会えば良いの?

 戸惑った私が中途半端に言葉を止めてしまったことには触れず、オフィーリア様は肩を竦めて言った。

「その精油、気になるわ……私も使ってみたい。良かったら、またそれを持って会いに来てくれる?」

「はい! もちろんです。試作品をお持ちするようにします。少量しかないので、小瓶になってしまいますが……」

 試作品はまだまだ改良の余地があり、他の香油と合わせる配合なども、商品化を見据えて試している段階だ。

 だから、十分な量は持って来れないと伝えた私に、オフィーリア様は笑って首を横に振った。

「別に、それで構わないわ……その時に、帰ってからジョサイアと何を話したか教えてくれる? 誤解が解ければ、きっと上手くいくとは思うけど、もしあの意気地なしがそれでも何も言わなかったら、私がホールケーキをあの綺麗な顔にぶつけてあげるわ」