次の日──。
今日は土曜日・・・そう、『お泊り会』とやらの日だ。
学校の校門前に集合し、俺の家に連れて行く。
「わー・・・ここが蒼鷺グループの家かぁ・・・」
鷹御が感嘆のため息を漏らし、家を眺める。
そんなに大きいか・・・?
ドアを開けて中に入ると使用人たちがこちらに気づき、頭を下げた。
『お泊り会』のことを親に伝えると、メンバーの中に育ちのいい女と有名なグループの御曹司だと知って(いや、調べたんだろうな)喜んでいた。
だからか、親が今、俺の前にいる。
「来ましたね。ようこそ、蒼鷺宅へ。お久しぶりですね、真空さん」
「え・・・あ、お久しぶりです、奥様。本日はお世話になります」
監禁事件のとき、母親を見たのか、挨拶をかわす2人を見て鷹御が声を潜めた。
「・・・なんで知り合いなの?」
真空はこの家に来たことがあるの?とでも言いたそうな鷹御から視線を外し、真空を見る。
可愛い・・・じゃなくて。
真空のやりたいこと半年間の内・・・初めのことを俺の家でできるなんて、嬉しい限りだ。
「いえいえ、真空さんが葵厘と仲がいいようで・・・こちらも安心しました。これからも葵厘のことをよろしくお願いします」
名前・・・久しぶりに呼ばれた気がする。
っておいおい、なによろしくしてんの。
「え・・・はいっ、私なんかでよければぜひ!安心できるどうかはわかりませんが、仲良しです!」
「そのようで・・・真空さんになら葵厘のことを任せられそうです」
「本当。真空さんは素晴らしい方のようですので」
父親もそう言い、真空をほめる。
「えへへ、ありがとうございますっ」
「そちらのみなさんも・・・ぜひ葵厘と仲良くしてくださいね」
「あ・・・はい、奥様。仲良くしてもらって毎日が楽しいです」
「そうなの、葵厘、よかったじゃない。貴方がクラスメイトと仲良くできるとは思ってなかったのだけど・・・よかったわ」
「・・・お言葉ですが、奥様」
真空が母親に向き合い、口を開いた。
「葵厘さんはクラスメイトのみんなとすぐに打ち解けていましたよ。すばらしいコミュ力でした」
え・・・打ち解けてなんかないぞ、今も。
「あら、嬉しいわ。教えてくれてありがとう、真空さん。葵厘、amazingよ」
アメージングって・・・普段そんなこと言わないだろ。
急にキャラ変した母親に呆れを感じて俺は額を押さえた。
はぁ・・・どんだけ真空のこと気に入ってるんだよ・・・。
・・・ん?もしかして・・・。
俺の親は・・・俺を、真空と婚約させようとしている?
権力的に、真空のひねくれた親の考えだったら婚約を断ることもないだろう。
うわ・・・もしそうだったら俺も親のコト言えないな。
だって絶対。
『・・・excellent』
っていう自信ある。
エクセレント・・・今のうちに発音確認しておくか?
・・・と、真空がいると調子が狂う両親に似て(?)俺の頭もちょっぴり・・・いや、結構おかしくなったのだった。
〈side 葵厘〉