蓮羅くんが残りの半年間、私の好きなことをやりつくそうと言ってくれた。
「まずはなにがやりたいの?」
コテン、と可愛らしく首をかしげる蓮羅くんに笑みを返す。
「えっとねぇ・・・そうだな、急だけど・・・。みんなで、お泊り会したいな」
「お泊り会!いいね、やろう!誰の家にする?」
「えー、氷空くんの家?」
蓮羅くんの提案に私は内心焦った。
だって氷空くんの家でお泊り会したら・・・氷空くんママとのこともあるし、一緒に住んでいることがバレちゃう・・・!
でも・・・どうしよう、私は今、それを断る理由を持ち合わせていない。
「あぁ、ごめん。今ちょっと俺の家無理なの。悪いけどほかの家じゃダメ?」
「あ、無理なのかぁ~。わかった!じゃあ大きさだったら・・・蒼鷺くん?」
「・・・俺は・・・真空が来ていいなら、いい」
「わぁ・・・いいの?じゃあお願いしてもいい?葵厘!」
「あぁ・・・いつだ?」
葵厘は緊張したように頷く。
あれか、監禁事件。
私が葵厘の家がトラウマになったとでも思ってるのかな・・・?
「・・・葵厘、葵厘」
そっと小声で呼びかけると葵厘はすぐに反応し、こちらに顔を寄せてくる。
「あのね、もう大丈夫だよ。あれは、怖くない。葵厘の家、行きたい。ダメ・・・?」
「・・・っ!もう、怖くないのか?ホントに?ウソ・・・ついてないか?気は使わなくても俺が悪いってこと、わかってるから・・・」
萎れたように弱弱しく言う葵厘の頭をそっと撫でた。
「大丈夫。怖くないよ、ホントだもん、ウソじゃない。気も使ってない」
葵厘が挙げた可能性を1つずつ潰し、ニッコリ笑いかける。
「私の好きな葵厘は、目の前にいるから」
「・・・ありがとう」
小さな声で呟いた葵厘は私から顔を話した。
・・・にしても視線を感じる。
じとーっとした感じの粘りつくような視線。
そろっと横を見るとVistaのみんながそろって私と葵厘を見つめていた。
「・・・なに話してたの?」
「え?あ、あぁ、葵厘の家って大きいんだねーって」
問いかけてきた氷空くんにそう答えると疑うような視線を向けてきた後、詮索はよくないと思ったのか、静かになった。
「明日からにするか?」
「早いね・・・でもいいかもね。半年っていう猶予付きだし、早めにやることに損はないかも」
「そうだね~。やりたいことが全部終われば2周目もいけるかも~」
心珠の提案に琴李くんが頷き、蓮羅くんも嬉しそうに言う。
2周目・・・いいね、お泊り会がもしかしたら2回もっ・・・。
「準備しなきゃね!あ、私、もう大丈夫だよ!意識失っただけだし、原因は今話してスッキリしたから!!」
笑顔でガッツポーズをつくり、みんなを見渡す。
「そっか・・・無理はしないように」
氷空くんが慈しむような笑みを浮かべ、頭を撫でてくれた。
「ふふ」
思わず笑みが零れ、それをごまかすようにベットから起き上がる。
「よし!・・・みんなが受け止めてくれてよかった」
安心してそのセリフを言い、私はベッドを囲うカーテンを開ける。
そのまま扉まで行き、ガラッと漫画馴染みの音を立てて教室を出た。
そして私は笑みを浮かべながら私のあとをついてくるみんなを振り返り、今まで話していてずっと、一番言いたかったことを口にする。
「こんな素敵な提案、ありがとう!」
こんな私でよければ・・・忘れないでね。
                                                                  
こんな私でよければ・・・友達でいてね。
                                                                   
こんな私でよければ・・・また逢おうね。
                                                                  
ありがとう、みんな・・・。
                                                                 
Vistaのメンバー、そして転校生の葵厘。
                                                                
みんなが私のことを忘れても・・・私は忘れないから。
                                                                   
ずっと、探し続けるから。
                                                                   
こんな私に話しかけてくれて・・・。                                                             
      
こんな私と仲良くしてくれて・・・。
                                                                    
こんな私に優しくしてくれて・・・。
                                                                   
──ありがとう。
                                                                  
大好きだよ──。