次の日──
いつも通り氷空くんと学校に行く。
教室に入るとすぐにVistaのみんながよってきて──その視線はすぐに私の左手首に行った。
「これ・・・ってなぁに?」
「かわいいね。誰から貰ったの?」
「よく似合っている」
蓮羅くんと琴李くん、心珠がそれぞれの反応を見せてくれる。
「真珠・・・だね。心珠からの贈り物かな?」
琴李くんがそう言い、蓮羅くんが納得したように大きくうなずいた。
「そっか~名前のこともあるし、双子だもんね~。今まで離れていた分、なにか同じものを付けたいとか~?」
ゆるゆるとした口調で言う蓮羅くんだったけど、その顔はどこか悲しそうに歪んでいた。
「・・・蓮羅くん・・・?」
「っ、どうしたの~・・・し、真空、ちゃん?」
無意識に手が伸び、蓮羅くんの頬にそっと触れた。
「ちょ・・・っ!」
なにやら氷空くんの慌てたような声がしたけど、私はそれにかまわずクイッと蓮羅くんの顔を上げさせた。
「顔色は・・・悪くないね。大丈夫?寝不足とかではなさそう・・・おなかとか頭とか。痛くない?」
「だ、大丈夫だよ~・・・っ!し、心配してくれありがとう~・・・」
「友達なんだから心配するのは当たり前だよ。それに・・・ホントに大丈夫?」
「う、うんっ・・・」
「・・・」
「・・・?」
バッと勢いよく離れられ、少しショックを受ける。
そ、そんなに嫌だったかなっ・・・?
いや、急に触れられたら誰でも嫌だよね・・・!
こ、恋人でもないんだからっ・・・。
そんな私の様子に気づいたのか、少し赤い顔のまま蓮羅くんが首を傾げた。
「どうしたの~・・・?」
「う、ううん?なんでもないよ・・・?」
そう言って教室を見渡す。
癖が出ちゃってるなぁ・・・。
私はなにか誤魔化したりするとあたりを見渡す癖がある。
そのときに何かを見つけることができるといいんだけど・・・。
すると葵厘と目が合った。
ちょうどいい・・・。
ってあ・・・葵厘、ちょうどいいなんて思ってゴメンねっ・・・。
心で謝りながら葵厘の席に近づいた。
「葵厘、おはよう」
「あぁ、おはよう」
無表情でそう返してくる葵厘だけど嬉しそうな顔をしているように見えるのは気のせいかな・・・?
「真空・・・ちょっといいか?」
「え?うん、いいけど・・・」
「よかった。じゃあこっち・・・」
控えめに訊かれ、うなずくと手を引かれて教室をでた。
教室から出る直前、クラスとVistaのみんなからすごい視線を感じたけど・・・。
空き教室の扉を開けるとぶわっと熱風が私と葵厘をつつむ。
窓が開いてたのか・・・。
ん?でも、なんで授業でも使われていない教室の窓が開いているんだろう・・・?
「あのね」
眼鏡をはずして素の自分になった葵厘の視線は私の右手首へ。
「そのブレスレット、似合ってる」
「・・・え?」

ソノブレスレット、ニアッテル

急にそう言われて戸惑ってしまう。
ええっと・・・ほめられてる、んだよね・・・?
「あ、ありがとう・・・」
とりあえずお礼を言っておいた。
「それってさ・・・その、心珠とかいうヤツからもらったの・・・?」
「え?違うよ?」
「そうなんだ・・・よかった。自分で買ったの?それ、本物の宝石でしょ?」
「うん、そうだね」
そう返事したけど驚いた。
これ、偽物のビーズとかじゃなかったんだ・・・と。
「自分では買ってないよ?」
「じゃあ誰が・・・?家族?」
「ううん、氷空くんがくれたの」
「・・・え・・・」
ショックを受けたように固まる葵厘。
「そう、なんだ・・・ね、真空って他にもアクセサリーつけてる?」
「つけてないよ。興味がないっていうか・・・」
「やった!じゃあコレ、つけてほしい」
つけてほしい・・・?
渡されたのはネックレス。
金色で、細かいチェーンの細いネックレスだ。
そのネックレスの先端には・・・薄い、金色の板。
3センチくらいの縦長の板で、表には女神が、裏にはバラが彫られている。
「・・・いいの?こんないいものもらっても」
「真空にあげたかったんだ。つけてくれる・・・?」
不安げに見つめてくる葵厘にニッコリ微笑んだ。
「もちろん。大切にするね」
さっそくネックレスをつけ、ブラウスの下に入れる。
「ふふ、いいね」
満足げに微笑んだ葵厘は眼鏡をかけて。
「かえろう」
私手を差し出した。
「うん」
その手をとって教室に向かう。

渡されたブレスレッドに・・・どんな意味が込められているのか、知らなかったんだ。