〈side 氷空〉
転校生の蒼鷺と真空が明らかに仲良くなってる。
メールで【今日は転校生の子とお昼食べるね!】って来たし。
真空が誘ったわけじゃないのはよかったけど蒼鷺の誘いをOKしたのも勝手にショックを受けていた。
家に帰る時は一緒。
一番距離が近いのは俺。
一番一緒にいる時間が長いのは俺。
だから・・・大丈夫。
そう唱えて放課後までぼーっとしていた。
気づくと教室には誰もいなくて。
真空だけがこちらを心配そうに見つめていた。
「えっと・・・帰る?」
「うん、帰ろ」
鞄を片手にとり、教室を出る。
「ねぇ・・・」
「なぁに?」
声を掛ければ笑顔で俺を見てくれる。
この、太陽よりまぶしい笑顔を・・・俺が独占したいな──なんて。
彼氏でもないのに何考えてんだか。
いや・・・仕方ないよな、うん。
真空の可愛さに敵う奴はいない。
俺だって何十回も、何百回も、真空に堕ちている。
堕とさせるだけ堕とさせて告白すれば。
きっと断られる。
なんて罪な子なんだろう。
それでも【好き】は度を増していく。
重症だな・・・。
「今一番、仲いいのは誰?」
「え?・・・あまり順番を付けるのは好きじゃないけど・・・」
うーんと悩む仕草も可愛い。
「氷空くんは一緒に住まわせてもらってるでしょ?蓮羅くんは女の子っぽいから絡みやすいでしょ?心珠は双子だけどもう家族以上でしょ?琴李くんは一番常識人だから相談しやすいでしょ?」
そうだなぁ・・・と結論に近づくたび、ドキドキと心臓が跳ねる。
「葵厘は出会ったばっかりだけど仲良くしてくれるし、たくさん心配してくれるでしょ?」
・・・なんか蒼鷺のイイトコ多くない?
「ん-・・・やっぱり一番仲がいいのは」
仲がいいの、は・・・?
どうしよう?
俺じゃなかったら。
自分で聞いておいて一番じゃなくて、落ち込んで・・・情けなさすぎる。
「氷空くん、かなぁ?」
──このときの幸福感はいつになっても忘れないはずだ。
「そっか・・・嬉しい」
素直な感想をぽろっとこぼすと真空はなぜか苦笑していた。
「わ、私なんかに一番仲がいいって言われて・・・嫌じゃない、の?」
「え?何言ってるの?嫌じゃないどころか嬉しすぎてヤバいよ」
「・・・それってホント?」
「信じてくれないの?多分男だったら・・・いや、女でも舞い上がって喜ぶよ」
「そ、そっか・・・」
俺が間違っていると思ったらしい。
微笑を浮かべながら真空は歩く足を速めた。
当てにならないとか思われたかな?
・・・真空が無自覚なのが悪いのにね。