「そうそう」

 アキさんが返事をすると、「かっこいいわね」とおばさんは佐々木くんのことをジッと見て言った。

「えー、そうかしら?」

 アキさんは嬉しそうな顔してるけど、佐々木くんはすっごく面倒くさそうで嫌そうな顔してる。

「こっちの子は? 彼女さん? 可愛いわね」

 おばさんの視線が突然こっちに向いたから、私はぼんっと顔から火が出るかと思った。

「ち、ちが……ちょ、佐々木くん?」

 違います、って言いたかったのに、上手く言えなくて、そしたら、佐々木くんがふいっと離れていってしまった。

「蒼空ってば照れちゃって。――優希ちゃん、お祭り、楽しんでね」
「はいっ、ありがとうございます」

 ふふっと笑うアキさんにお礼を言って、私は急いで佐々木くんのあとを追った。

「待ってよ、佐々木くん。帰っちゃうの?」

 佐々木くんの足はあきらかに公園の外に向かっていた。

「用事が終わったから」

 佐々木くんはすぐそれ言う。

 たぶん、彼の言う用事、はアキさんが私にお礼をすることだと思う。

 たしかに、それは終わったけど。

「終わってないよ。せめて、私がこのわたがしを食べ終わるまでは一緒に居てよ」

 私は手に持ったわたがしを佐々木くんに突きつけた。

 私、なに言ってるんだろう。

 そう思ったけど、言ってしまったものはしかたない。

 近くにあったベンチに座って、隣をトントンと手で叩く。

「はぁ……、わかった」

 あきれたように大きな溜息を吐いて、佐々木くんは私の隣に腰をおろした。

 こんなこと意味ない、とか思ってそう。

 なんで残ってくれたんだろう?

「……」

 黙々とわたがしを食べる私。

 佐々木くんはなにも言わないし、このままじゃ、すぐ食べ終わっちゃう。

 ううん、ほら、もう口の中でぜんぶ溶けて消えちゃった。

「ハチ、本当に消えちゃったのかな……?」

 わたがしのなくなった割りばしを見つめながら、私はぼそりとこぼした。

 思い出して、泣きそうになる。