「別に」

 いつも通りの佐々木くん。

 そう言うと思ってたよ。

「こっちだ」

 ふいっと顔をそらして、私の前を歩き出す佐々木くん。

 ふっと笑って、私も彼のうしろを歩き始めた。

 公園に近づくにつれて、少しずつお祭りに向かうらしき人たちが周りに増えていく。

 家族で来てる人たちもいて、佐々木くん大丈夫かな、って私はちょっと心配になった。

 ママとパパのこと思い出して、苦しくならないかなって。

「佐々木くん、大丈夫?」

 なんとか佐々木くんの横に追いついて、私は彼に尋ねた。

「なにが?」
「あ、えっと、人が多いから……」

 あまりにも佐々木くんがなんとも思ってないような顔をするから、私は咄嗟にテキトーなことを言ってしまった。

「まあ、人が二倍くらいには見えるけど、いまのところはなんともない」

 公園に入って、人の列を見ながら佐々木くんが目を細める。

「それならよかった」

 二倍って……と思ってしまうけど、佐々木くんが傷付いてないなら、なんでもいいやと思った。

 ちょっとホッとして、木から木につなぐように飾られた色とりどりの提灯がキレイだなって素直に思えた。

 広場の中央に建てられたやぐらはキラキラして見えて、軽快な太鼓の音と盆踊りの音楽が、ああ、お祭りに来たんだなって雰囲気を醸し出してくれている。

 ふふ、私だって難しい言葉、知ってるでしょ?

 佐々木くんは気付かないけど、私はふふんという顔で彼の横顔を見た。

 すると、急に佐々木くんがピタリと足を止めた。