◆ ◆ ◆
夏休みの終わり、私は佐々木くんとアキさんのところの夏祭りに参加することになった。
本当は紗菜ちゃんと学校のほうの盆踊りに行くつもりだったけど、アキさんが私にお礼をしたいって言ってくれて、佐々木くんともこれが最後かもしれないって思ったから……。
「ねぇ、ママ、可愛くできてる?」
玄関の姿見の前でくるりと回って全身を確認しながら、私はママに尋ねた。
今日はママに水色の浴衣を着せてもらったんだ。
黄色の花が可愛いやつ。
それに髪もオシャレに結ってもらった。
「うん、可愛いよ。でも、なぁに? 優希、好きな子でもできた?」
うしろからぐっと私に顔を近付けてママがニヤリと笑う。
それが鏡越しに見えた。
「ち、ちがうもん」
私はバッとうしろを振り返ってママに言った。
だって、佐々木くんのことは別に好きとかじゃないもん。
無愛想で、冷たい言い方とかするし、なに考えてるかわからないし、まあ、たまにかっこいいかもと思うことはあるけど……。
「ふーん、そうなの?」
ママはまだニヤニヤ意地悪な笑みを浮かべてる。
「わ、私、もう行かなくちゃ、紗菜ちゃんが待ってる」
できるだけ平気な顔して、私は玄関の扉を開けた。
紗菜ちゃんが待ってるっていうのは嘘だけど。
「気を付けていってらっしゃい。あまり遅くならないようにね?」
「うんっ、いってきます」
ママに元気よく手を振って外に出ると、浴衣に合わせた下駄が私の足下でカランと音を立てた。
夏休みの終わり、私は佐々木くんとアキさんのところの夏祭りに参加することになった。
本当は紗菜ちゃんと学校のほうの盆踊りに行くつもりだったけど、アキさんが私にお礼をしたいって言ってくれて、佐々木くんともこれが最後かもしれないって思ったから……。
「ねぇ、ママ、可愛くできてる?」
玄関の姿見の前でくるりと回って全身を確認しながら、私はママに尋ねた。
今日はママに水色の浴衣を着せてもらったんだ。
黄色の花が可愛いやつ。
それに髪もオシャレに結ってもらった。
「うん、可愛いよ。でも、なぁに? 優希、好きな子でもできた?」
うしろからぐっと私に顔を近付けてママがニヤリと笑う。
それが鏡越しに見えた。
「ち、ちがうもん」
私はバッとうしろを振り返ってママに言った。
だって、佐々木くんのことは別に好きとかじゃないもん。
無愛想で、冷たい言い方とかするし、なに考えてるかわからないし、まあ、たまにかっこいいかもと思うことはあるけど……。
「ふーん、そうなの?」
ママはまだニヤニヤ意地悪な笑みを浮かべてる。
「わ、私、もう行かなくちゃ、紗菜ちゃんが待ってる」
できるだけ平気な顔して、私は玄関の扉を開けた。
紗菜ちゃんが待ってるっていうのは嘘だけど。
「気を付けていってらっしゃい。あまり遅くならないようにね?」
「うんっ、いってきます」
ママに元気よく手を振って外に出ると、浴衣に合わせた下駄が私の足下でカランと音を立てた。