「そっちだな?」

 不思議と森の中で詩ちゃんの姿はぼんやりと光って見えて、木が増えてきても、道じゃないところを通っても見失うことはなかった。

 そして、ある場所で詩ちゃんの足が止まる。

「この下だ」

 そう言いながら、佐々木くんは急な斜面になっている場所を覗き込んだ。

 懐中電灯で照らしてみたけれど、地面はうんと下にあるのか、真っ暗でなんにも見えなかった。

「たぶん、これが最後だ。秋兎おじさん、本当にいいの?」

 もう一度、佐々木くんがアキさんに右手を差し伸べる。

 躊躇いながらアキさんの手が動く、でもやっぱり途中で止まってしまう。

「詩は言ってる。あれは秋兎おじさんのせいじゃないって」

 佐々木くんが言うと、近くに立つ詩ちゃんがコクンと頷いたのが見えた。

「この子がいたから、僕は救われたんだ。秋兎おじさんにも助けてもらえた」

 詩ちゃんのほうを見て、佐々木くんがふっと笑う。

 二人で笑い合ってるみたい。

「詩があんたとアタシをつないだのね……」

 ずっと泣きそうな目でアキさんがそろりとこちらに手を伸ばす。

「そう。だから、今度は僕が詩と秋兎おじさんをつなぐ番だ」

 佐々木くんは自分からアキさんの手を強くつなぎにいった。