「アタシは蒼空の、幽霊が見える力を否定したかったんじゃないの。あんたが知るはずのない詩の話をするから、ずっと怖かったの」

 佐々木くんは、幽霊の話をするとアキさんがとても怒ると言ってた。

 でも、それは佐々木くんの力を信じてないわけでも、幽霊の話がただ怖いってわけでもなかった。

「秋兎おじさん、本当のことを話してよ。どうして、ここなのか。どうして、僕を止めるのか」

 佐々木くんの言う通りだ。

 詩ちゃんのことを佐々木くんが知っていることが怖かっただけなら、詩ちゃんのことを調べて怒る理由にはならない。

「……っ」

 アキさん、どうして、唇を噛んで口を閉ざしてしまうの?

「秋兎おじさん!!」

 ずっと冷静だった佐々木くんが大きな声を出した。

 アキさんの肩がビクッと震える。

「ずっと抱えていくつもりなのか?」

 また静かな口調になって佐々木くんが言う。

 もしかして、佐々木くんにはほんとはなにか見えてるの?

「……アタシが……」

 緊張からか、アキさんの声はかすれてた。

 だから、言い直すことにしたみたい。

「アタシが蒼空と同じくらいのとき、詩は小学一年生だった。ここには家族でキャンプに来たの……」

 すこしずつ、すこしずつ、アキさんが言葉を紡いでいく。

「詩は元気で可愛くて、ずっとアタシについて歩いてた」

 過去を思い出すアキさんの瞳は温かかった。

 けれど、すぐにそれも冷めてしまう。