いつもなら「僕は別に頼んでない」とか言うのに。

「蒼空、なにか言ってよ。もう帰りましょう?」

 アキさんが困ったような顔で佐々木くんに語りかける。

 でも、佐々木くんは無言でなにかを持った手をアキさんに差し出した。

 そこには佐々木くんが昼間落とした物、アキさんのお店に置いてあった赤いリボンの髪ゴムがあった。

「これを触ったら僕にはここが見えたんだ。これは詩のものだよね?」

 落ち着いてる、というより少し冷たい感じで佐々木くんが言う。

 霊視でここが見えたって? どうして? どんな関係があるの?

 考えてみたって、私にはわかりっこない。

「……て」

 俯いて、アキさんがなにか言った気がした。

 でも、佐々木くんは止まらなくて

「見えた看板から地名も調べて、やっとここに辿りつい――」
「もう調べるのはやめて……!」

 彼の言葉を遮るように顔をバッと上げて、アキさんは強く叫んだ。

「なぜ? 自分の妹のことを調べるのは僕の勝手じゃないか。詩が僕のことを待ってるかもしれないんだ」

 変わらない佐々木くんの口調。

 静かで、冷たくて……、でも

「やめてよ……! 詩は……あんたの妹じゃないの! アタシの妹なの!」
「え?」

 アキさんの言葉に佐々木くんも私も固まってしまった。