バタンッ

　急に聞こえて、なんの音かな、って最初は思った。

　でも、すぐに車の扉を閉めた音だってわかる。

　ちょっと進んだところに大きな森があって、その手前に停まっていた白い車の横に誰かが立っていたから。

「アキさん……？」

　そう言ったのは私。

　よく見たらアキさんだったの。

　いつもと変わらない表情に、いつもと変わらない格好。

　もしかして、佐々木くんはサマーキャンプを途中でリタイアするのかな？

　それでアキさんが迎えに来たとか？

　でも、

「なんで勝手にここに来たの？」

　アキさんの第一声はこれだった。

　鋭い視線が佐々木くんを見つめてる。

「蒼空が普通に学校の行事を楽しんで帰るんだったらアタシも黙ってひとりで帰ろうと思ってたけど、やっぱりここが目的だったのね」

　アキさんは続けるけど、私にはなにもわからない。

　なんの話をしてるんだろう？

　そう思ったら、アキさんがちらっと私を見た。

「はぁ……、優希ちゃんまで巻き込んで……」

　佐々木くんから返事がないからか、アキさんは深く溜息を吐いて、そう言った。

　でも、佐々木くんはなにも言わない。