◆ ◆ ◆

「きゃーっ!」
「あははは」

 外、夜の真っ暗な闇の中、前を行く子たちの叫び声や笑い声が聞こえる。

「みんなが安全に肝試しをできるのはハチと君のおかげだ」

 私の隣で、そう言ってくれたのは佐々木くん。

 落ち込んでるけど、すこしだけ元気が出る。

 紗菜ちゃんには「優希ちゃん、どうしたの? 元気ないね」って言われちゃったけど、なんとか誤魔化した。

 いまは佐々木くんとペアで肝試し中。

 早いけど、これがサマーキャンプ最後の夜で、明日にはお家に帰るんだ。

「佐々木くん、ゴールそっちじゃないよ?」
「知ってる」

 スタートして数分で、佐々木くんがコースアウトして、畑横の道を進んでいく。

 先生に見つからないようにこっそりと。

 昼間も点呼には間に合ったからバレなかった。

「佐々木くん」
「君は来ないほうがいい」

 私も同じほうに向かおうとしたら、またそう言われた。

 冷たい瞳に冷たい言い方。

 昼間も同じことを言われて、行って、ハチが消えちゃったんだ。

 でも、行ってなかったら、きっと佐々木くんは……。

 けど、もうハチはいない。

 佐々木くんの力になれない。

 だから、私がいっしょに行っても意味がないのかな?

「……っ」

 ……ううん、やっぱり、佐々木くんを一人にはできないよ。

 私は顔をぶんぶん左右に振って、佐々木くんのあとについて歩いていった。