「ダメ! 佐々木くんはあげない!」

 私、強くなりたい! 佐々木くんを助けたい! 守りたい!

 そう願いながら、私も佐々木くんの左手をギュッと握り直した。

 すると

「にゃぁあん!」

 私のうしろから大きな鳴き声が聞こえて、ハチがすごい速さで赤い子に飛びかかった。

「ハチ!」

 ごろごろと地面を転がるハチと赤い子。

 どちらからもとても強い怒りを感じた。

 これは佐々木くんの霊を感じる力かもしれない。

「……っ」

 しばらく、取っ組み合いをしていたハチと赤い子だったけれど、ハチの姿がどんどん、どんどん大きくなっていって……私たちの前で赤い子といっしょにキラキラとした光の粒みたいになって消えてしまった。

「消えちゃ、った……」

 力が抜けて、その場にへたり込む私。

「大丈夫か?」

 佐々木くんはやっと動けるようになったみたいで、私の腕を掴んでいっしょに立ち上がらせてくれた。

「すまない」

 悲しそうな表情で佐々木くんが私のことを見て言う。

 でも、佐々木くんを助けたいって私が望んだことだから、ハチが消えて、悲しんじゃいけないって思った。

 だから、私は泣かなかった。

 唇を噛みしめて、「ううん、佐々木くんになにもなくてよかった」って笑ったんだ。