たしかに、これまでの幽霊は退治したわけじゃない。

 場所を変えて、そこに存在し続けてる。

「ねぇねぇ、なに二人でヒソヒソ話してるの?」
「な、なんでもないよ?」

 急に紗菜ちゃんが私たちのうしろから声をかけてくるから、びっくりしてしまった。

「へぇ、仲良いんだね」
「違うって、ほ、ほら、生き物探しに行こ!」

 にまにまと笑う紗菜ちゃんの手を取って、私は佐々木くんからすこしだけ離れた。
 
 まったく、紗菜ちゃんってば、のんきなんだから。

 佐々木くんの言ってる幽霊のことは怖いけど、いまはあんまり水面に近付かないようにして、ひとりになるようなことは避けよう。

 私はそう思ったけど、佐々木くんのほうに問題が起こる。

「まずいな……」

 どのくらい時間が経ったかわからないけど、川の生き物観察タイムに参加してるフリをしていた佐々木くんが、突然、そう呟いた。

 よく見てみると、ズボンのポケットを何度か探っている。

「なに? 落とし物?」

 きいてみたけど、佐々木くんのことだから、落とし物なんてしないよね?

 だって、私より何倍もしっかりしてるんだから。それに

「さっきまで、ここに入っていたのに」

 佐々木くんの言う「さっきまで」のときは、彼は参加してるフリだけでほとんどその場から動いてない。

 なにもしてないのに、落とし物ってする?