「うわっ!」

 急に横のほうで男の子の驚く声がした。

「そこ! ふざけない! 川は浅くても溺れることがあるんですからね!」

 早川先生は厳しく叱るけれど、なんだか様子がおかしい。

「先生―、後藤くんがなにかに足を引っ張られたって言ってます」

 そう報告するのは後藤くんと同じ班の三宅くん。

 後藤くんが泣いてるのは、きっと怖かったからだよね?

 先生に叱られたのが恥ずかしかった、とかじゃなくて。

 川の中に転がっちゃったみたいだけど、慌てて上がってきたみたいだし。

「都会の中より、自然の中のほうが怖いものがいるんだ。このままだとみんなが危ないし、僕も離れられない」

 佐々木くんの言っていることは今回もとても難しい。

 離れられない、ってなんだろう?

 どうして、佐々木くんはサマーキャンプにきたの?

「佐々木くん、どうしたらいい?」

 小声で佐々木くんに助けを求める私。

「まったくわからない。僕は別に幽霊を退治できるわけじゃないんだ」

 めずらしくこわばった顔で佐々木くんは答えた。