「ちょっとは寝られた?」

 次の目的地でバスからおりて、私は佐々木くんに小さな声できいた。

「まあ、少しは」

 そんなこと言って、佐々木くんのその言い方はぜんぜんって感じ。

「はい、みなさん、ついてきてください。足下、大きな石があるので転ばないように気を付けて」

 先生がみんなを川遊びのできるところまで誘導してくれる。

「僕が見えることに気が付いたのかもしれない。ずっと憑いてきてる」

 並んで先生についていく生徒たちの一番うしろ、佐々木くんが前を真っ直ぐ向いたまま怖いことを言った。

 ついてきてる、って、それ、幽霊的な意味の憑いてきてるってこと、だよね?

「小さな子供に見えるけど、なんか、気持ちが悪いんだ。もっと、なにか悪いもののような気がする」

 私はなにも口に出してきいてないのに、佐々木くんがひとりごとのようにどんどん幽霊について説明をしていく。

 でも、姿のこととか、もっとハッキリ言わないのはなんで?

 天気はいいけど、なんだか気分はどんよりだよ。

「今日はここで川に住む小さな生き物たちを観察します」

 四人の先生が左右に散らばって、水深の浅い川を背に今日やることを教えてくれる。

「ちょっと近付いて見てみましょう。生き物は居そうですか?」

 私のクラスの担任の先生は女の人で、早川先生っていうんだ。

 気が強くて、ちょっと怖いときがあるんだけど、でも悪い先生じゃない。

 先生に言われるままに、私たちは恐る恐る川に近付いた。