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「小さい子供の霊が、僕の安眠をジャマしてくるんだ」

 次の日の朝、佐々木くんは疲れた顔をしてた。

 いつも眠そうにしてるけど、そういう感じとも違う。

 気が付いたら、佐々木くんは移動中のバスの中で、隣に座る私の肩に寄りかかるようにして眠っていた。

 起きてるときは憎たらしいことばっかり言ってくるのに、寝てるとちょっと可愛い。

 可哀想だから、起こさないでいてあげよう。

「ねぇ、優希ちゃん」
「しーっ」

 前の席から紗菜ちゃんが話し掛けてきたけど、私は自分の唇に人差し指を置いて、静かに、というジェスチャーをした。

「へぇ」

 紗菜ちゃんが嬉しそうに、にやりと笑う。

 また絶対悪いこと考えてる。

「ふふっ」

 なかなか前を向かないで、ちらっと佐々木くんの寝顔見て、あやしく笑って、紗菜ちゃんってば先生に前向きなさい、ってこのあとちょっと怒られてた。