「ねー、誰―? うちの班の火消したのー」

 他の班の子が文句を言っているのが聞こえて、見てみると、水をかけてもないのに大きく燃えていた焚き火が消えてたり、誰もいないのにガシャンって急にお皿が落ちたり。

「なにかいる」

 私の横で佐々木くんが小さく呟くのが聞こえた。

「人じゃない」

 幽霊を見ることには慣れているはずなのに、佐々木くんはそう言いながら、めずらしくとても緊張している感じがした。

 もしかして、佐々木くん、怖がってる?

 ここには一体、なにがいるの?

「大丈夫? 佐々木くん」
「大丈夫じゃない。僕の近くにいる」

 私が心配して尋ねると、まるで視線を動かさないようにしてるみたいに前を向いたまま佐々木くんが小さな声で言った。

 彼にはなにが見えてるんだろう?

 そう思って、私がそろりと佐々木くんの手に触れようとしたときだった。

「やめたほうがいい」

 すっと私の手を避けて、佐々木くんが怖い顔をする。

 その瞳が、ある一点を見つめたまま、ぼそりと呟いた。

「気付かれたかもしれない」

 って。

 まるで無意識に口からこぼれたみたいだった。