けれど、ガタンと上から物音が一つした。

 降りて来るんだ……?

「アタシはお店の準備があるから、ちょっと居なくなるけど、ゆっくりしていってね」

 お店ってなんだろう? と思ったけれど、私は「ありがとうございます」と言ってアキさんを見送った。

 それから少しして、上から静かに階段を降りてくる足音が聞こえてきて、私は緊張した。

 どんな子なんだろう……。

 入学式に他の子を気にしてる余裕なんてなかった。幽霊が見える男の子が居るなんて知らなかったし、それに佐々木くんとは二年生のときも同じクラスだったけど、一度も見たことがない。

「はぁ……、秋兎(あきと)おじさんは、なんで勝手に……」

 面倒くさそうに呟いて、彼がリビングに入ってきた。

 寝癖のついたさらっとした黒髪、気だるそうな瞳……、動物に例えるのはちょっとだけごめんなさいだけど、昔、うちで飼ってたハチって黒猫みたいだなって思った。

「あ、あの、私、同じクラスの木村優希。助けてほしいの」

 私は座っていた椅子から立ち上がって、佐々木くんを見た。

「はぁ……、なにも分かんないんだけど?」

 また深い溜息を吐いて佐々木くんが嫌そうな顔で、そう言う。