「僕は君にそんなことを言ってほしいためにこの話をしたんじゃない」
「……っ」

 まさか、佐々木くんにそんなことを言われてるとは思ってなくて、ズキンと胸が痛んだ。

「いま、僕が学校に行ってないのは僕の意思だ」

 佐々木くんの言葉は止まらない。

「僕は人を探してるんだ」

 五年生になっても学校に来てないのなんでなんだろう、って考えてたけど、それが理由?

 もしかして、佐々木くん、自分のパパとママを探してるの?

 そう思ったのに、私の考えは間違ってた。

「閉じ込められてた一年半くらいの間、僕には妹がいた。名前は詩。歳は当時の僕と同い年くらい。でも、妹だと思った。あの子がいたから、僕は強くいられた。妹を守らなきゃって気持ちが僕を強くした」

 自分のTシャツの胸元あたりをギュッと握って、佐々木くんは言った。

 どうして、そんな大人みたいなんだろうって、ずっと思ってた。

 へんだな、って。

 でも、ムリにでもそうならなきゃいけなかったのかなって、強くならなきゃいけなかったのかなって、いまならそう思える。

「食べるものがなくなって、最後に逃げるために窓を割ったのは僕だったのか、彼女だったのか……」

 見えないはずなのに、聞こえないはずなのに、どこからか割れたガラスの音が聞こえた気がした。