「――それより、君はいつまで僕におんぶされてるつもりだ? もう平気だろ?」

 さっきと違って、ちょっとムスッとした言い方で佐々木くんが言う。

「えっ、あ! えっと、ごめん……」

 どきっとしながら、そろそろと佐々木くんの背中からおりると、さっきまでの苦しさがウソみたいだった。

 暑いことには暑いけど、そこまでだるくないし、私、元気だ。

「佐々木くん、助けてくれてありがとう」

 目の前で腕を上げて伸びをする佐々木くんに私はお礼を言った。

「あの狛犬は君のことが好きだったみたいだ」

 ひとつ大きなあくびをしながら、佐々木くんが言う。

 今回は「別に」って言わないんだ?

「ハチもよくやったな」

 私の前にしゃがんで佐々木くんは見えないハチの頭を撫でてるみたい。

「ハチもありがとう」

 見えないけれど、私も同じようにしゃがんでハチにお礼を言った。

 でも、気になってるのは佐々木くんの表情。

 絶対、私に見せるより優しい顔してる。

 また、笑ってほしいな、なんて私が思ったときだった。