「いや、尻尾を振ってる」

 なんともない表情で佐々木くんが首を横に振る。

「あ、私になついてるんだ?」
「そうだな」

 佐々木くんとの会話が終わった。

 ちょっとの沈黙。

 よかった~、狛犬さん、なんか私に怒って憑いてきたのかと思った~。

 いやいやいやいや、ちょっと待って。

 なんか平和的に終わりそうな感じになってるけど、ちがうの。

 ぜんぜん大丈夫じゃない。

「どうしよう、佐々木くん、このままだと背中重たいし、なんかどんどん疲れてきてる気するの!」

 あわてて私はカウンターテーブルに身を乗り出した。

 やっぱり背中が重いっ。

「まあ、そうだろうな、狛犬に生気をうばわれていってる。このままだと君は死ぬかもしれない」

 ほら、ぜんぜん大丈夫じゃない、って……

「し、死ぬ? 私、死ぬの!?」

 佐々木くんはなんて怖いことをさらっと言うんだろう!

 びっくりして椅子から落ちそうになっちゃった。

「タイムリミットは今日の夕方までだな、それ以上は君の生命力がもたない」
「そ、そそ、そんなこと言われてもっ! 佐々木くん、私、どうしたらいいの!?」

 澄ました表情の佐々木くんに、ちょっとは自分で考えろ、って言われるかもしれないけど、いまはそんなことを考えていられる余裕なんてない。