佐々木くんなんて、とくに人の心を読みそうな瞳をしてるから……。

「犬だ」

 佐々木くんの答えはあっさりとしたものだった。

「い、ぬ?」

 私は思わず、ポカンという顔をしてしまった。

 もっと怖いものが憑いているんだと思ってたから。

「君は一体、なにをしたんだ?」

 佐々木くんは心の底からあきれてるみたい。

「なにもしてないよ? 壊れた神社をちょっと見て回って……、あ……、ちょっとかわいそうだなと思って、くずれた石の犬の頭を撫でただけ」

 石の犬は二匹いて、一匹は完全にくずれてしまっていたけど、もう一匹は半分くらい残っていた。

 だから、一匹でちょっとかわいそうだなって……。

「え……」

 まさか、これじゃないよね? という顔を私は恐る恐る佐々木くんに向けた。

「君は本当にバカだな」
「ばっ……」

 そんなにまっすぐ言われると思ってなくて、私は開いた口が閉じなくなった。

 なにか言い返したかったのに、言葉が見つからない。

「原因はそれだ。すごく大きな狛犬が君の背中に覆いかぶさるように憑いてる」

 佐々木くんにそう言われて、バッと後ろを右と左から順番に振り返ってみるけれど、私にはなにも見えなかった。