「……っ」

 ドギマギする私の前、いつもと変わらない気だるげな様子でお店の鍵を開ける佐々木くん。

 鍵を開けて中に入るなり、佐々木くんは椅子の並んだカウンターの向こう側に行って、冷蔵庫を開けた。

 私は入口から店内を見回して、こういうのシックっていうんだっけ? と思った。

 ふわふわした赤色のソファとか、カウンターテーブルのこちら側にある丸椅子とか、レトロとも言うのかな?

 シャンデリアみたいなおしゃれなライトもあってキレイだなぁって、気付けば、まじまじ見てしまっていた。

 すると、急にトンッという音がした。

「くれるの?」

 佐々木くんがカウンターテーブルに麦茶の入ったコップを置いた音で、私は静かにコップが置かれた席に座った。

 なんかお店屋さんごっこしてるみたい。

「熱中症で倒れられたら面倒だから」

 不機嫌そうな顔で佐々木くんは自分もコップの麦茶を一口飲んだ。

 素直に「うん、あげる」って言えばいいだけなのに。

「……ありがと」

 なんか複雑な気持ちだけど、お礼だけは忘れない私。

 一口飲んだ麦茶は冷たくて美味しかった。

 コトンと向こう側でコップを置く音がする。

「はぁ……、それで、なにがあった?」

 また深い溜息。

 カウンターテーブルをはさんで立つ佐々木くんの視線は相変わらず私の後ろに向いている。