◆ ◆ ◆

 ピンポーン

 インターホンの黒いボタンを押してみると、おなじみの音がした。

「はい、どちら様?」

 少しして、ちょっと不機嫌そうな男の人の声が聞こえてくる。

「えっと、佐々木くん居ますか? 私、同じクラスの木村優希って言います」

 私は緊張しながらインターホンのマイクに向かって声を絞り出した。

 言ってから、先生に頼まれたと言えばよかったかな? と思う。

 だって、勝手に近所で見たって子に聞いて探して来ちゃったから、なにしに来たの? って怪しまれるかも。

「え? 蒼空(そら)のお友達?」

 インターホンの向こう側で男の人が驚いたような声を出した。