「握って」
「え、あ、う、うん」

 佐々木くんに静かに言われて、ハッとなって、握手かなと思って私も右手を差し出そうとしたんだけど、「んんっ」と咳払いされて、左手で彼の手を握った。

 不思議な感じ。

 小林くんに手を掴まれたときはイヤだったけど、佐々木くんと手をつなぐのは別にイヤじゃない。

 緊張してるからなのか、私の心臓がドキドキしてる気がする。

「なにか見えたりするか?」
「なにか、って……あ……」

 佐々木くんの言葉に、なに言ってるの? みたいな顔をしそうになったけれど、なにかぼんやりと私の足下に見え始めて、私は声をもらした。

 黒くて、小さくて、ふわふわで耳と尻尾があって……。

「ハチ……!」

 急にハッキリと黒猫のハチの姿が見えた。

 でも、なにも怖くなかった。

 佐々木くんの手を握ったまま、私はしゃがんで、まん丸おめめのハチの頭をそっと撫でた。

 にゃぁん、っとハチが鳴く。

 本当に不思議な感じ。

 触れてるけど、感覚はない。

 佐々木くんなら、きっと、もっとちゃんと触れるのかも。

「佐々木くん、これって……」