「人の家の間取りとか、時と場合によって色々なものが」
「まどり?」
「人の家の中が見える。まあ、いまは道を見てるんだけど」

 また「質問が多い」とか言われると思ったけど、佐々木くんはさらっと答えてくれた。

「なんで最初からやらないのかって思っただろう?」

 今度は佐々木くんが私に聞いてきた。

「うん、なんで?」

 聞いてほしいのかな、って思って尋ねてみる。

「面倒くさいから。解決するかも正直わからないし」
「そう言うと思った」

 ちょっとだけ佐々木くんって子がどんな子かわかってきて、その答えだけはなんとなく予想ができた。

「なんだ、少しはわかるんじゃないか」

 まぼろしかもだけど、私の答えに佐々木くんの横顔が、ふっと笑ったように見えた。

 笑ったのはじめて見た……。

「なに見てるんだ?」
「べ、べつに」

 じっと佐々木くんの顔を見てしまっていることに気が付いて、私はふいっと目をそらした。

 佐々木くん、自分が笑ったの気が付いてないのかな?

 私がそう思ったときだった。

「この家だ」

 佐々木くんの足がひとつの家の前で止まった。