「小林くんは男の子なのに、女の人の幽霊に取り憑かれるなんて……」

 佐々木くんの横に立って、そう言いながら私も指輪を見てみた。

「幽霊に性別は関係ないんだよ。人間の身体は男女関係なく人間の身体なんだから」

 また佐々木くんは難しいことを言う。

「それに、ちゃんともとの場所に返そうとしたんだよ? なのに、なんで?」

 もとの場所に指輪を置いたのに、まだ「返せ」って、ここに返せって意味じゃないのかな?

「〝この〟女の人の家族に返さないといけないのかもしれないな」
「なんで、わかるの?」

 佐々木くんが、目の前のなにもないところを見て「この」って言ったのも気になるけど、まずは「家族に返さないといけない」と思った理由が知りたい。

「だって、これを持ってると彼女はなにもしてこないから」
「どういうこと?」

 説明されても、まだわからない。

「これをどこかに持っていってほしいから、なにもしてこないんだと思う。ここに置き去りにされると困るから、彼女は誰かに取り憑くんだ。それで、どこかは正確にはわからないが、まずは家族からだと僕は考えた」

 淡々と落ち着いた口調で佐々木くんは私にさらに説明してくれた。

 ここでやっとわかった。

 いままで指輪を持っていた小林くんが、女の人の幽霊に取り憑かれなかった理由はそれだったのかもしれない。