「もとに戻したよ?」

 電柱の下にしゃがんだまま、小林くんが私のほうを振り向いた。

 たしかに、そこにはさっきまで彼が持っていた指輪が置かれている。

 でも、紗菜ちゃんに会いに行ってみないと、指輪を戻したことに意味があったのか分からない。

 だって、今のところなにも変わったところは……

「小林くん? どうしたの?」

 突然、小林くんがゆらりと立ち上がって、どきりとした。背が大きいから、彼の影がまるまる私を包む。

「返して……」

 彼の口からこぼれた言葉に背筋がゾッとした。

 思わず、後ろに後ずさる。

 怖くて、彼の目を見ることが出来ない。

 小林くんの手が私のほうに伸びてきて……