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「それでさ、そのゲームが面白くて……」

 佐々木くんが私のことを置いていったから、私はとくに興味のないゲームの話を小林くんから聞かされながら例の事故現場に向かうことになった。

 二人きりだし、ずっと手を握られているし、あまり嬉しくない。

 これが好きな男の子とだったらなぁ、とか私だって思うわけで。

 好きな子のタイプとかは、まあ、まだよくわからないけど。

 とにかく、小林くんとはなんかイヤ。

 でも、これは紗菜ちゃんを助けるためだから。

「で、ここが指輪を拾った場所」

 小林くんが足を止めた場所は、児童館からも学校からも近い交通量の多い大きな道路だった。

 よく見てみると、横断歩道横のガードレールの下に小さな花束があった。

 置かれてから数日経っているみたいで、もとの色が分からないくらい茶色く色が変わっている。

「この電柱の横に転がってたんだ。ってことは、ここに戻せばいい?」
「た、たぶん」

 電柱の下を指差しながら小林くんが私に尋ねてくる。でも、私に聞かれても困るよ。曖昧な返事しかできない。

「なにが起こるんだろう? 楽しみだね、優希ちゃん」

 別に誰もなにかが起こるなんて言ってないのに、小林くんはそこにしゃがみながら私に言った。

 自分の指から指輪を外すために私の手から小林くんの手がはなれてくれたのはよかったけど。