「優希ちゃんも一緒に返しに行こうよ。二人で行こう」
「え?」

 小林くんに言われて私は戸惑ってしまった。

 面白そうって、事故現場に指輪を返しに行くこと?

 でも、なんで私まで?

「拾った本人が協力的なんだ、よかったな」
「え、佐々木くん?」

 どうしようって思ってる私を置いて、佐々木くんが手をヒラヒラと振りながら、どこかに行こうとしていた。

 不機嫌そうな表情で、まったくなにを考えてるのか、わからない。

「もしかして、君も優希ちゃんが可愛いって思ってた? だから、俺に取られて機嫌悪いとか?」

 佐々木くんのほうを見てへらへらと笑いながら、小林くんが私の手を掴んだ。

 なんだか嫌な感じがする。背中が冷たくなるみたいな。

「ありえない。僕の機嫌はいつだって悪いさ」

 助けてくれると思ったのに、本当にどうでもいいみたいな表情で佐々木くんはそう言った。

「強がっちゃって。君を仲間に入れてあげてもいいんだぜ?」
「僕は用事がある」
「ちょっと佐々木くん……!」

 小林くんの言葉に引っ張られることなく、佐々木くんは躊躇なく私のことを置いてどこかに消えた。