「サイズとデザインから女性のものだ」

 小林くんの反応を気にすることなく、佐々木くんは指輪を指さして、そう言った。

 彼はこの指輪の持ち主のことを言っていたんだ。

「いや、そうじゃなくて、君は誰? 優希ちゃんのなに?」

 戸惑った顔をする小林くんに、佐々木くんは

「僕は佐々木蒼空。優希? 誰だ? それは」

 と言い放った。彼にまったくふざけている様子はない。

 もしかして、私、佐々木くんに名前覚えられてないっ!? 

 いまさっき目の前で小林くんに自己紹介したところなのに!?

「隣に立ってる彼女のこと」

 小林くんの瞳が私を見た。

「ああ、こいつは僕のなんでもない」

 理解した瞬間、さらっと佐々木くんが言ってのける。

 こいつって、と思ったけれど、佐々木くんが「見せてくれ」とグイッと前に出て、指輪をじっくり見始めてしまったから、私はなにも言えなくなってしまった。

「血はついてないんだな」

 小林くんが拭いたのだろうか? 私も薄目にして確認したけれど、たしかに、拾った指輪には血はついていなかった。