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「君、この前の子だよね?」

 小林くんはすぐに見つかった。背が周りの小学生より大きいからだ。

 私が近くに行くなり気が付いて、すぐに声をかけてきた。

 まさか、向こうから話しかけてくるなんてビックリする。

「木村優希です。あの、小林くんが事故現場でなにか特別なものを拾った、って噂は本当なの? ウソじゃないよね?」
  
 単純に「見せてほしいの」と言おうとも思ったけれど、私はすこし頭を使った。

 ウソじゃないの? と疑うことで、プライドの高い人は逆に自慢がしたくなるらしい。どこかの心理番組でやってた。

「ウソじゃないさ、ここにあるし」

 そう言って、小林くんは自分のズンのポケットから銀色の指輪を取り出した。

 ほら、引っ掛かった。小林くんもまんまと心理番組の罠にはまった。

 まあ、ポケットに入れておくなんて、すぐになくしてしまいそうだけれど。

「女性だとは思っていた」
「へ?」

 私の隣に立っている人物、すなわち佐々木くんが、突然言葉を発したことにより、小林くんはビックリしたようだった。