佐々木くんに合わせるように私ももう少し歩くスピードを上げて、彼の隣に並んだ。

「人の多いところに行くのか、面倒くさいな」

 せっかく私が調べたことを報告したのに、佐々木くんは全然いい反応をくれなかった。

「その、あからさまに嫌そうな顔するのやめてくれない?」

「僕は間違ったことは言ってない。生きた人間のほうが幽霊よりもよっぽど面倒だ。大勢居るところなんてなおさら……。僕の性格が嫌なら帰ればいいけど、たぶん、君はそうしない」

 佐々木くんは私と同じ歳なのに、ちょっと大人みたいな言い方をする。

 それに彼の言う通り、私は帰らない。彼の力が必要だから。

 佐々木くんが私に冷たくするのは、私に利用されてると思ってるからなのかな?

「でも、一緒に来てくれるんだよね?」

 彼はさっき「面倒くさい」と言っただけだ。

 だから、面倒だけど来てくれる、っていうこともあるはず。

 私は横を歩く佐々木くんの顔をちらっと見た。

「僕の用事のついでだ」

 こちらを見ずにぼそりと彼が言う。

「用事って?」
「君に答える気はない」

 佐々木くんは全然心を開いてくれなくて、会話も続かない。

 だから、私はひとりごとのように「紗菜ちゃん、関係ないのに、どうして取り憑かれちゃったんだろう?」と言葉をこぼした。

 だって、紗菜ちゃんは話をしてただけだもん。それなのに、どうして?

「怖い話をしてると幽霊が寄ってくるんだ。原理は知らないけど。それで、たまたま自分の話をしてるって気付いた幽霊が君の友人に入ったんだろう」

 かなりテキトーではあるけれど、意外にも佐々木くんが説明してくれた。

 憎たらしい言い方しないときもあるんだ?

「そう、なんだ? 教えてくれてありがと」
「別に」

 私がお礼を言うと、佐々木くんはさらっと言って足を止めた。

 つられて足を止めて、横を見ると、そこには大きな白い建物があった。丸い窓がたくさんついた不思議な建物だ。

「ここが木漏れ日児童館だな。僕は小林なんとかの顔は知らない」