佐々木くんは見えるらしい

　だから、「なに？」って不機嫌なままの表情でぐいっと佐々木くんに近付いた。

「……君には水色が似合うと思う」

　そっぽを向いたままそんなことを言われるとは思ってなくて、ドキリとする。

　佐々木くん、さっきアキさんに言われたこと、気にしてくれてたんだ？

「……あ、ありがと……」

　なんかほっぺたが熱くなってきた。

　無言で顔を手であおぐ。

　しばらくの沈黙のあと、口を開いたのは佐々木くんのほうだった。

「――詩が、どうして君の前にだけ現れたのか考えてみた」

　すごく真面目な話で緊張する。

　やっと目が合ったと思ったら、佐々木くんの視線は真っ直ぐすぎた。

「本当に私の前だけだったのかな？」

　考えてみてもわからない。

「僕や秋兎おじさんの前には一度だって姿を現したことはなかった。たぶん、僕は人とコミュニケーションを取るのが苦手だから、君が、僕と秋兎おじさんとの架け橋になってくれると詩は考えたんだと思う」

　詩ちゃんのことを思い出しているのかな、佐々木くんは優しい顔してる。

「なれたかな？」
「ああ、君には感謝してる」

　私が尋ねると佐々木くんはやけにあっさりと私にそんなことを言った。

「へへっ、なんか、照れくさいなぁ……」

　佐々木くんに素直に言われるとなんかむずむずして落ち着かない。

「僕は君に言っていなかったことがある」
「それって、また悪いこととか、悲しいこと？」

　どきりとして私は身構えてしまった。