「きゃっ!!」

 急に私と佐々木くんの間にぬっと男の人の顔が出てきて、私は大きな声を出してしまった。

「うわっ!」

 佐々木くんもびっくりしたのか私の手を握ったまま、駆け出す。

 ハチを片手で抱っこしたまま、しばらく走って、私と佐々木くんは公園の中のちょっとした丘みたいになってるところにきた。

 運良く、みんなはお祭りのほうを楽しんでいるからか、ここには人がいない。

「あははっ、佐々木くんも幽霊にびっくりして走り出すときあるんだ?」

 足をとめて、肩で息をしながら、私は笑った。

 だって、幽霊になれてるはずの佐々木くんが慌ててたから。

 生きた人間におどかされたかもって?

ううん、生きてる人にしては真っ青な顔だったから、たぶん、あれは幽霊だったと思う。

「僕は君の声に驚いただけだ」

 眉間に皺をよせながら佐々木くんは私から手を放した。

 一瞬でハチが見えなくなる。

「あっそ」

 いつも佐々木くんが冷たく言うから私もそう言ってみた。

 佐々木くんばっかり、私をバカにしてずるいんだ。

 たまには私だって、最後くらい、私だって……。

「…………は……が、…………う」
「え?」

 急に佐々木くんがそっぽを向いてぼそりと呟くから、私は悪口でも言われたのかと思った。