四日経てば、一緒に過ごした他人の輪郭ははじめて出会った日よりも幾分かはっきりとするものだ。



芹は、美しく微笑みながら、わたしが相手では、何でも自分が望めば思い通りになることを疑わない男で、それでも、やさしくはしてくれる。


彼にはアイスを食べた夜以降も、気紛れにわざとらしい女扱いをされ、その度に動揺してしまったけれど、そんななかでも、なんとなくわかった。



彼のそれは、性欲や恋情などからくるものではなく、玩具で遊んでみるくらいの退屈しのぎなのだろう。

おそらく、そういうことが平気でできるくらいには経験値が豊かなのだろうけど、それは別に彼が好んで積んだものではなそうだった。



芹は、自分のことを当主ではないと言っていた。

だから、何も言えないと。


芹自体が何を目的としているのかは分からないけれど、ここから出してもらうためには、芹に掛け合うのでは、湯を沸かして水にするのとそう変わらない。


微笑みひとつで、きっと逃げ躱され続けてしまう。


糸を伸ばし続ければ、段々と細くなる。そして、それはいつか切れる。

二つの顔をもつ蛇が、引き裂かれたまま、長く生きていけるわけがない。そして、その場合、身体を受け継ぐのは間違いなく月臣だ。