薪が一本崩れ落ち、光が揺れてリランの端正な顔を照らしだす。

ずるい人、そして愛しい人。もう拒めない———

毛布を床に敷いて、そこに横たえられる。
リランの指がテスのドレスのボタンを外してゆく。テスは目を閉じた。
耳に届くのは薪のはじける音と降り続く雨音、それに二人の乱れた息遣い。
ほかには何も聞こえない。

そしてもう寒くはなかった。リランの熱と自分の熱が一つに溶けて、熱いほどだ。

名実ともに彼のものになった実感はわいたけれど、それでもテスはリランの腕を枕に静かに泣いた。
少女の(とき)は終わったのだ。その惜別の涙だった。

リランはただじっとテスを抱きしめていてくれた。
静かに夜は過ぎていった。