しかもその遠因はどうやら自分だった。
まったく気に留めていなかったが、そういえばフェント家の当主から何度も食事会だの何だのと誘われていた。

義憤にかられ、両親にも打ち明けた上で、リランはフェント家を利用させてもらうことにした。

ゼドーからの舞踏会の招待に、色よい気をもたせる返事を送った。
『…両親から将来のことを考えるように言われており…良い巡り合いがあることを願って』
そう、本当に巡り合えることを願っているのだ(相手が誰とは言っていない)。
自分とテスの劇的な再会のお膳立てをしてもらおうではないか。


そうして今、偶然に導かれてテスと狩猟小屋に降りこめられている。

「止みそうもないわね」
雨音を聞きながら、テスがつぶやく。

止まないでほしいと自分は願っている。
炎に照らされたテスの肌。クリームに蜂蜜を落としたようななめらかさだ。

テス、と腕を伸ばして彼女の肩を抱くと、ビクッとこわばった。
怖がらないでと、囁きを耳に注ぐ。

「いけないわ、わたしたちまだ結婚もしていないのに」
忘れな草色の瞳に怯えの色が走る。

「誰も知らない。ここには僕たちしかいないんだ。すべては偶然に起こったことだ。レアが石を踏んだのも、雨が降ってきたのも。
雨がすべてを閉ざしてくれる。だから怖がらないで、僕を信じて」